顎関節症について
顎関節の動き
関節が動くということは下顎が動くことです。狭い考え方では頭蓋骨が固定して下顎が動くとしています。
しかし意識して動かせばすぐ分かりますが、頭蓋骨を動かさずに口を開けると喉にぶつかります。従って、首を後方に引いて下顎をさらに大きく開くようにしています。下顎を動かすとき、頭蓋骨や頸椎も動いているのです。
また、舌は下顎や舌骨から生えていますので、舌の動きと関係が深いです。下顎は舌骨を介して直接胸骨や肩甲骨まで繋がっています。顎関節は決して単純ではないのです。
顎関節症の症状
基本的には、関節雑音、関節痛、開口障害です。これらの症状は全部出るわけではありません。雑音だけでも軽度の顎関節症といえます。関連症状に頭痛、耳鳴り、首凝り肩凝りなどがあります。
関節雑音は、主に関節円板が引っかかったとき出る症状です。多くは円盤が静かにずれて、音がしたときに正常な位置に戻っています。顎関節をドアに例えるとスムースに開くのが正常。軋むが何とか開く状態が関節雑音がある状態といえます。但し、顎関節は蝶番運動だけでなく伸び縮みが大きく異なります。かくかく引っかかる雑音は軽い方です。進行すると引きずるような音になります。円板や関節頭がすり減ります。
音がしても痛みがないことは多いですが、痛みを伴う場合もあります。痛みが出ると動きを自分で抑制するので、大きく口を開けられなくなります。痛みがなくて口が開かない場合もあります。
上記症状はだんだん強くなることがありますし、朝起きたら口が開かないなど急に発症する場合もあります。
顎関節症の原因
顎関節は、左右協調して動き大きく伸び縮みする特徴から、調和が崩れると発症します。
大きな力を急に受けて関節が動かなくなることを捻挫といいます。顎関節でも殴られたり転んで捻挫はありますが、顎関節症は軽度の負荷の積み重ねで慢性的に起きる捻挫といえるかもしれません。
一つの要因ではなく積み重ねで起きるのです。耐える限界を超えたときに起きると思われます。逆にいえば原因の一部を取り除いて、限界以下になれば変更するのです。
片側噛み癖
利き腕があるように利き顎があります。偏って噛んでいると、顎関節に負担がかかります。
但し、右噛み癖で右に症状が出るとは限らないようです。後方に食い込んでいくと同じ側に症状が出ます。右噛み癖で左に症状が出る場合、左の関節頭に外れる力がかかっているようです。右噛み癖で右回り噛み、右噛み癖で左回り噛み、左噛み癖で右回り噛み、左噛み癖で左回り噛みがあるように感じています。
歯ぎしり・食いしばり
大きな力を使っていると関節に負担がかかります。朝起きたら口が開かない症状の一つは睡眠時の歯ぎしりが関係するでしょう。音がするだけが歯ぎしりであるわけではなく、音がしていなくても強く食いしばっている場合があります。
力仕事でなくても緊張感で食いしばっている人はいます。決して強く食いしばっていなくても、連続して噛みしめていると関節に負担がかかります。ついたり離れたりする咀嚼は顎や脳に良い影響を及ぼしますが、連続して噛みしめているのは害があるのです。
頬杖
頬杖は下顎に片方から力がかかり、関節に負担をかけています。寝転がってテレビを見たり、ソファに頭を乗せて横になっているのも同様に負担がかかります。
机に突っ伏して寝る
首や顎に負担がかかり顎関節症の要因になります。おでこに手を置いている人は負担にならないようです。
首を横に向けて食事をしている
テレビが正面ではなく横にある場合、いつも横を向いて咀嚼していることになります。首を同じ方向に向けていると関節に負担がかかります。
また、向いている方の噛み癖に繋がります。右利き腕の人は右噛みになりやすいですが、左を向いて食事していると左噛みになったりします。
うつ伏せ寝
うつ伏せ寝する場合、必ず首は横を向きます。テレビを見る時よりも大きく力がかかります。首に負担がかかるだけでなく、4~5kgある頭部の重みが関節を圧迫します。
うつ伏せ寝は顎関節症の一因です。「うつ伏せ寝健康法」という本がありますが、高齢者や身体が不自由な人にやむを得ず取らせる体位の位置づけです。「健康法」として真似するものではありません。
枕
高い枕、固い枕も原因になります。横向き寝でも顎に負担がかかります。うつ伏せ寝と同様、頭部の重みが固い・高い枕の場合、関節を圧迫する要因になるのです。
低くても首の下に支えがない場合は負担がかかる場合があります。低反発枕もじわりと顎を圧迫します。低反発枕に替えたら顎関節症を発症した人がいますので、注意が必要です(低反発枕が全ての人に悪いわけではありません)
スポーツ
力を出すために食いしばる時間が長いスポーツは、顎関節症になりやすい傾向があります。片方を向くスポーツ(弓道など)は顎関節症の一因になる場合があります(他の要因と重なると起きる場合がある意味であってそれが悪いわけではありません)。
楽器演奏
片方を向いて顎で押さえるバイオリンなどは、顎関節症の一因になる可能性があります(他の要因と重なると起きる場合がある意味であってそれが悪いわけではありません)。比較的強く吹く楽器(トランペット、サクソフォーン、ホルンなど)も一因になる場合があります。体位の左右差はありませんが、吹くときに下顎が不安定になり、かつ口腔・顎周囲の筋肉を強く使用しているためと思われます。