妊娠、出産時Q&A(Answer)
子供を産むと歯が弱るって本当ですか?
妊娠・出産によってむし歯や歯周病がひどくなることは確かにあります。しかし、子供にカルシウムが取られるからではありません。一旦できた歯からカルシウムを溶かす機構はありません。身体が歯からカルシウムを取ることはできないのです。歯を支える骨の場合は、骨は破骨細胞があり極度のカルシウム不足の場合、骨が弱ることもなくはありません。しかしよほど偏食しない限りそういうことはありません。
妊娠中はよく食べ物を口にします。食物が口にある時間が長いほど菌の固まりである歯垢(しこう)がよく発達し、むし歯や歯周病が進行しやすいのです。食事の量に比例して多めに歯磨きするよう気を付ける人は余りないでしょう。また、妊娠期に増えるホルモンは少しの歯垢でも歯茎を腫れやすくします。腫れるとさらに歯垢が溜まりやすくなるという悪循環の環境を作ってしまいます。それによりむし歯・歯周病が増えるのです。また、つわりがひどい方の場合は、胃酸で口の中が酸性になることも関係します。
妊娠中は歯茎が腫れやすいのですか?
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあります。それぞれ多少差がありますが、 歯茎が鋭敏になり反応が起きやすくなります。少量の歯垢でもその中のバイ菌の毒素に激しく反応します。出血しやすく時に痛みが出ます。また、いわゆる歯周病でなくても歯の動揺をきたす場合もあります。
女性ホルモンで特に増える菌も見つかっています。
妊娠時に口腔乾燥になる方も4割ほどあります。乾燥気味になるとますます菌が増加しやすい口の中の状態になります。時に妊娠腫という腫れ物になる場合もあります。
歯周病と早産、未熟児の関係は?
ある程度以上の歯周病(歯肉炎・歯周炎(歯槽膿漏))にかかっていると歯茎にいる菌の毒素によって子宮の収縮に関わる物質を刺激し、2,500g以下の低体重児や早産の可能性が正常な歯茎の方より7.5倍も高くなるという研究が最初アメリカで出ました。
日本人を対象にした研究でも相関性は確認しています。
妊娠中に歯が痛くなったらどうすればいいですか?
我慢せず歯科を受診してください。身体を休めてください。頬から冷やさないでください。冷たいものを食べないこと。これらは下記すべてにいえます。
親知らずの場合
親知らずの歯茎だけの場合はうがい薬でうがいしても良いです。
差し歯の歯の場合
根の先に膿がある場合は、基本的には差し歯を取って根の中の再治療です。妊娠中にできる場合はありますが、状況により出産後と言われる場合があります。治療可能な場合は、差し歯を外し膿を出したり薬で抑えます。
大きいむし歯の場合
神経がある歯の場合は、神経を取ると落ち着きます。その際麻酔を打ちますが麻酔薬は局所で程なく分解しますから通常量では問題ありません。
妊娠中に歯が痛くなったら薬を飲んでも大丈夫ですか?
飲まない方が良いに越したことはありませんが、あまりに身体が疲弊するような場合はその方が胎児に良くないといえます。よって比較的安全な薬を選択します。歯科の場合は飲むとしたら抗菌薬(抗生剤、化膿止め)と鎮痛薬ですが、処方可能な薬がありますから選択してもらえばよいです。
授乳中の薬はどうですか?
妊娠中に飲んで良い薬と少し種類が違います。胎盤は通りにくいが母乳に移行しやすい薬もありますので妊娠中にもらった薬をそのまま飲まないでください。授乳中は授乳中に出せる薬があります。
どうしても心配な場合は、授乳中のみミルクにしたり、保存しておいた母乳を飲ませる選択肢があります。
妊娠中のレントゲンは?
歯科のレントゲンは、胴体に防護エプロンをすれば子宮にはほとんど到達しません。よって、安全といえます。
しかしながら、実際には心理的影響が大きいので、必要性が強い場合以外は撮影しないことがほとんどです。妊娠に気付かず撮影してしまったこともありますが心配いりません。
授乳期に気を付ける歯科的配慮とは?
子供に歯が生えてきたら、授乳の後に乳かすを軽く拭き取ってください。母乳によるむし歯もあります。ミルクの場合は特に注意してください。哺乳ビンの場合出過ぎる乳首を使わないでください。下を向けてミルクが垂れないのが理想です。乳首を顎や舌で搾って乳を飲む行為は後の顎の発達に大切です。出過ぎる乳は赤ちゃんが楽をしてしまうので顎の発達や歯並びに影響します。離乳は無理に急がなくて良いです。
熱が出たときに小児科医にイオン飲料を勧められる場合がありますが、常時飲むことはしないでください。ごく初期の乳児用以外、大人が飲めるものは糖分としてはジュースと同じです。